2日前、近隣住民から騒音に対する苦情が入った。施設設置の給湯器の音がうるさいとのことだった。その近隣住民は、たびたび施設に苦情を寄せている。給湯器の他にも、玄関のチャイム音や換気扇やエアコンの室外機や。苦情は電話で寄せられることがほとんどで、怒りに任せて言いたいことを言ってしまうと、一方的に切ってしまう...ということが多い(らしい)。幾ら怒ってるからとは言え、その態度はあまりにひどいと思う。
けれど。もし自分が相手の立場だったら、同じように怒るかもしれない...とも思う。ローンで買った念願のマイホームの南隣が介護施設で、そこから日々耳障りな音が聞こえてくるのだとしたら。
一番の問題は、原因が給湯器であれ、玄関のチャイム音であれ、換気扇であれ、エアコンの室外機であれ、それが騒音に該当するかどうか...なのだが、正直なところよく分からない。法的な話は別として、それらが騒音と言えなくもないし。
今日、社長命令でそのお宅を訪問した。社長の命令は「物腰柔らかく威圧してこい」というもので、必ず男性2人以上で訪問するように言われた。その命令もひどい。そして、そのお宅を訪問すると。チャイムを押すと玄関先に子供が出てきた。しばらくすると奥さんがやってきて、要件を伝えると、ご主人をそこへ呼んだ。ご主人はなかなか出てこなかった。玄関先にやってきたご主人は立ったまま、奥さんは正座をして、こちらの話を聴いた。来意を伝えると、ご主人は「電話をした覚えはないけれど、確かに騒音はうるさいですね」と言った。それならば話をしても仕方がないと思ったけれど、せっかくここまで来たのだし「せめて」と思って、僕は騒音についての会社の見解を取りあえず伝えた。話を続けている途中で、正座した奥さんはご主人の袖を引っ張って、しびれを切らすように言った。「どうして電話をしてないなんて嘘をつくのよ。正直に話したらいいじゃない。」それはとても悲哀に満ちた声だった。そこでの話は結局平行線で終わった。予想通りに。こちらは設備には問題ないと言い続け、あちらは騒音対策をしろの一点張りだった。
その夫婦は僕よりも幾らか若い感じだった。子供が2人居て、僕たちが話を続けてる間、ずっと小さなボールで遊んでいた。夫婦はこんな話もした。「このままではここには住めない。住宅ローンが残っているけれど、どこかに引っ越すしかない...そこまで思い詰めている。」その間、子供たちはずっと無邪気だった。けれど、夫婦はとても不幸そうに見えた。そして。すべての不幸の原因は、あなたたちのグループホームにあるのだ...そう言われているような気がした。
会社に戻ると、社長に訪問の結果を「平行線」と報告した。すると、どういった訳か説教を喰らう羽目にあった。社長はどうやら僕にチンピラのような役回りを期待していたようだった。社長は「お前が何を言っても責任問題にはならない」「警察を呼ばれたってかまわない」とまで言った。
そんなことがあって、今日は一日を深い憂鬱の中で過ごした。とにかく。この「騒音問題」は、僕の人生にはあまり関係ない。確かに僕はいまこの問題に巻き込まれている。けれど。最終的には僕自身の問題ではありえない。本当にうんざりしたときには、会社を辞めてしまえばいい。それだけのことだ。そして。喧嘩をしたければ、当事者同士が好きに争ってくれたらいい。